税理士法人漆山パートナーズ

TOP 基礎知識 分籍届とは|分籍した後の...

Knowledge基礎知識

分籍 相続戸籍 相続相続 税理士

分籍届とは|分籍した後の相続権について紹介

相続が発生した際、財産を引き継ぎたくない、あるいは特定の親族に財産を渡したくないと思うことがあります。
しかし、分籍などの戸籍上の手続きが、法的な親子関係や相続権にどのような影響を与えるのか、正確に理解されていないことが多いです。
この記事では、分籍届の基本的な意味から、分籍した後の相続権がどうなるのかについて解説いたします。

分籍届とは?

分籍届とは、戸籍の筆頭者およびその配偶者以外の成人した人が、現在の戸籍を抜けて、自分を筆頭者とする新しい戸籍を作るための届出です。
この手続きは、戸籍法に基づいて行われます。
分籍は、本人の意思によって行えるものであり、親や配偶者の同意は必要ありません。
分籍によって、親子や兄弟姉妹といった親族関係が消滅するわけではありません。
戸籍が分かれるだけであり、法的な親子関係はそのまま維持されます。
分籍届は、本籍地の市区町村役場または住所地の市区町村役場に提出します。

除籍や転籍との違いは?

分籍、除籍、転籍は、いずれも戸籍に関する手続きですが、それぞれ意味が異なります。
戸籍とは、夫婦と未婚の子を単位として編成される、国民の身分関係を公証する公簿です。
除籍とは、戸籍に記載されている人が、死亡、結婚、離婚、養子縁組などでその戸籍から全員いなくなり、戸籍自体が閉鎖された状態のことです。
転籍とは、戸籍の記載内容を変えずに、戸籍を他の市区町村へ移す手続きのことです。
分籍は、戸籍の構成員の一員が抜けて新しい戸籍を作る手続きであり、戸籍の筆頭者とその配偶者は分籍することはできません。

分籍した後の相続権について

分籍届を提出し、新しい戸籍を作成した後でも、相続権は一切変わりません。
分籍は、あくまで戸籍の所在や編成が変わるだけであり、親子や兄弟姉妹といった法的な親族関係には影響を与えないためです。
相続権は、民法で定められた血族関係に基づいて発生します。
したがって、分籍をした子どもは、親が亡くなった際に、実子として法定相続人となり、遺産を相続する権利を持ち続けます。
分籍によって、他の相続人と相続分が変わることもありません。

親子関係を消滅させる方法はある?

親子関係を完全に消滅させるための法的な手段は、特別養子縁組以外にありません。
特別養子縁組とは、実親との法的な親子関係を断ち切り、養親との間で安定した親子関係を築くことを目的とした制度です。
この手続きは、原則として子どもが15歳未満であること、実親が養育が困難であることなど、厳格な要件を満たす必要があります。
特別養子縁組が成立すると、養子は実親の相続権を失います。
通常、成人した親子が相互の合意で親子関係を解消するための手続きは存在しません。

相続したくない場合の対処法

被相続人の財産を相続したくない場合の対処法として、相続放棄という手続きがあります。
相続放棄とは、家庭裁判所に申述することで、被相続人の遺産を一切受け継がないという意思表示をする手続きです。
この手続きが受理されると、その人は最初から相続人ではなかったものとみなされ、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もすべて引き継がないという包括的な効力があります。
相続放棄をする場合は、相続が開始されたことを知ったときから3カ月以内に行う必要があります。
これにより、被相続人の負債を背負うリスクを回避できます。

相続させたくない場合の対処法

特定の相続人に財産を相続させたくない場合の対処法として、相続人廃除という制度があります。
相続人廃除とは、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を与えたり、著しい非行があったりした場合に、被相続人の意思に基づいてその相続人の相続権を剥奪する制度です。
この制度を利用するには、被相続人が生前に家庭裁判所に申し立てるか、遺言書にその旨を記載しておく必要があります。
ただし、単なる感情的な理由だけでは認められず、客観的に証明できる事情が必要です。
加えて、遺言書に記された相続人の廃除は、遺言執行者しか行うことができません。
遺言執行者とは、被相続人が残した遺言を実行する人のことです。
被相続人が相続人の廃除を遺言に記す際には遺言執行者を指定しておくと、被相続人の死後、スムーズに遺言の内容を進めることができます。

まとめ

分籍届は、成人した人が現在の戸籍を抜けて新しい戸籍を作る手続きであり、相続権には影響しません。
親子関係を完全に消滅させるには、特別養子縁組が必要です。
また、相続したくない場合は相続放棄、特定の相続人にさせたくない場合は相続廃除という法的な手段があります。
相続税関連の問題でお困りの際は、ぜひ税理士にご相談ください。